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ニデックのご紹介

第3回 失敗からの派生もある


 

ハードコート剤の開発

コート研究開発部 開発二課 技師 小出

※所属・役職は掲載時のものを使用

コーティングとは、ガラスやレンズ、フィルム、プラスチック成形物など、おもに光学材料に対して反射防止や特定波長の透過・反射の制御、傷つき防止、表面の保護などを目的とした、ナノからマイクロメータレベルのさまざまな薄膜を施す技術です。今回紹介するハードコート剤は、摩擦による傷つきや熱、薬品などへの耐久が強く、かつ、密着性も高く、製品の価値を高めるものです。
ハードコート剤の開発のきっかけ、失敗から派生した新たな発想など、開発への想いを紹介します。

きっかけ

Q. ハードコート剤の開発に至った経緯を教えてください。

現在、ほとんどの眼鏡レンズには、傷がつかないようにするためにハードコートが施されています。さらに、映り込みを防止する目的で、反射防止加工もおこなうことが多いのですが、ハードコートレンズにこの加工を施すと、レンズ自体の衝撃に対する割れ難さ(耐衝撃性)が低下してしまいます。このため、市販されている眼鏡レンズには、耐衝撃コートが施されており、1層目はやわらかく衝撃を吸収するプライマー層、2層目は硬く傷を防ぐためのハードコート、3層目が反射防止膜になっています。開発の目標は、この耐衝撃コートのプライマー層とハードコートの2層を1つにして、「硬くて衝撃に強い」コーティングを実現することでした。


 

ハードコート剤


目標断念


Q.難しそうな開発ですが、順調に進んだのでしょうか。

実は、開発は順調に進まず、当初の目標を断念したのです。開発初期は、国の研究機関でハードコートを研究されている先生と共同研究をおこない、高屈折率(注1)、耐衝撃性、耐摩耗性が得られるハードコートを開発しました。しかし実用レベルには及ばず、一旦開発を断念しました。月日をおいて、別の手法でハードコートを研究されている大学の協力も得て、開発を再スタートさせました。何度も大学に通い、教授にもご協力いただきながら研究を重ね、傷に強いコート剤を開発することができました。しかし、開発したコート剤は、傷には強かったのですが、目標であった1層のコーティングでは、眼鏡レンズを衝撃から十分に守ることができなかったのです。コート剤に含まれる物質の配合の割合を変化させて試みましたが、衝撃には絶えられず、1層でのコーティングを断念することとなりました。
(注1)なぜ、屈折率を高くする必要があるのか:めがねは、度数が強くなるとカーブをつけるために厚みを必要としますが、レンズが厚くなると重くなるため、薄いレンズが好まれます。しかしレンズを薄くするには、レンズの素材を工夫し、薄くても厚いレンズと同じように見ることができるよう、レンズの屈折率を高くする必要があります。そこで、そのレンズにコーティングする場合も、同じように高い屈折率のコーティング剤が要求されます。

気持ちは次へ

Q.目標を断念せざるを得なくなったとき、どのような気持ちでしたか。

開発の目標達成にはならなかったものの、落胆はしませんでした。当社のコート剤が、他社製品よりも傷に強いことは自負しており、必ず何かに応用させることができると踏んでいました。そこで、ここからどう派生させようかと考えました。そのとき、既に気持ちは、コート剤を生かせる素材を考えることへと向いていました。

派生

Q. 目標の断念もつかの間、あらたな方向へと気持ちが向いていたようですね。方向転換の結果、何にたどり着いたのでしょうか。

当時、傷つきにくいことから表面にガラスが使用されていた製品で、軽量化のためにアクリル樹脂などのプラスチックが、ガラスに代わって検討され始めていました。そこで、新たに需要のある素材としてプラスチックに着目し、コーティングを試みることとしたのです。ある日、COP(注2)というプラスチックの一種へのコーティングを依頼されました。他社のコート剤では十分に密着せず、コーティングできなかった素材ですが、素材への密着力が強い弊社のハードコート剤によって、難しいとされたCOPへのコーティングを実現させました。このとき、当初の目標を断念せざるを得ない状況からでも、そこから新たに、派生させることもできるのだと確信しました。

(注2)COP:シクロオレフィンポリマー、熱可塑性樹脂の一種


困難なときは


Q. 開発する中で、困難も多いと思います。どんなことがありますか。

困難なことといえば、自分が専門とする化学の反応では、ときに予想と全く異なったことが起こることです。研究、開発をしていくためには、ある程度予想して進めていくのですが、結果が思いもよらぬこととなり、再度、考え直すことや実験を最初からやり直す必要がでてきます。しかし、化学の面白さの一つに、その想定もしなかったことが、ブレイクスルー(突破口)となることがあります。また、企業は、実験だけでなく、実際に製品化することを目標とします。ですから、考えた性能や特徴が、確実に、十分に発揮されるよう、製品に仕上げていくことも重要となります。その他、製品化には、量産性、耐久性、コスト、販路や物流を考慮しなければなりません。これらのことを考えながら実験、試作をおこなううちに、コート剤のサンプルは、約500までになりましたが、一つひとつ色々なテストをしました。私の場合、新たな実験に向かうとき、思わず鼻歌を口ずさんでしまうこともあります。真剣に、じっと考えこむべきときもあると思いますが、失敗や困難な場面で、ポジティブな精神で難しい状況を楽しむようにすれば、きっと良いアイデアが生まれてくるはずです。

大きな目標

Q. 次なる目標もポジティブに考えられているのではないですか。

もちろん、もっとコーティングの可能性を探求していきたいと思っていますよ。現在、モバイル機器、デジタルサイネージ(電子看板)などの表示部分、自動車関連の透明部品では、ガラスからプラスチックへと置き換えが進みつつあります。そのような、プラスチック部材のコーティングにも挑戦していきたいです。たとえば、輸送関連で使われる部品を、コーティングしたプラスチックで置き換え、軽量化を実現できれば、省エネ効果でCO2排出量削減にも貢献することができます。大きな目標かもしれませんが、大丈夫です。きっとできるはずです。

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