視覚障害の現状
Your vision is our mission.
治療法が確立されていない眼疾患への挑戦です。
私たちは身体の感覚器である眼や耳や鼻、皮膚などを使い、自分の周りの情報を得て、障害物にぶつからないように移動したり、相手や自分の声を耳で聞いて会話をしたり、温度や形状を感知して身の安全に必要な対応をしたりして、生活し、行動しています。
このように感覚器を使って利用している、身体を取り囲む外界の情報のうち、多くは視覚情報が占めていると言われています。そのため視覚が障害されると、生活や行動への影響も大きいと想像できます。
視覚や聴覚といった「感覚」は、眼や耳など「感覚器」にある「受容器」が感知した外部からの光や音などの「刺激」が、脳・中枢神経系に伝わることで発生します。
ヒトはこの感覚を使用して、日常的な行動や身体への危険回避などを効率よくおこなっています。

ポイント1:人工視覚=電気デバイス
視覚が障害された状態、つまり「見えにくい」状態ですが、これにもさまざまな「見えにくい」状態があります。
例えば、「狭い視野しか見えず、周辺がよくわからない」「全体的にぼんやりしている」「遠くのモノに焦点は合うけど近くの細かい字は見づらい」など、「見えにくい」の症状はさまざまです。ヒトの視覚システムを構成する眼球や脳の、どの細胞組織が、どのように、どのくらい障害されたかなどによって、見え方や見えにくさも変わってくるのです。
このような「見えにくい」症状も、原因や疾患の進行によって、「見えにくい」から「ほとんど見えない」や「失明」に至ることもあります。しかし、疾患によっては、多くの研究成果によって、このような状態を予防することや、ほぼ完治させること、あるいは進行を止めることなどができるようになった疾患もたくさんあります。
下のグラフは、WHOの 2019年World report on visionによる、世界の失明・視覚障害の原因と、患者数です。国・地域によって調べ方が違うため推計値ですが、少なくとも、22憶人の患者さんがいると考えられています。
白内障、屈折異常は、世界で最も多い視覚障害の原因です。いずれも、白内障手術や眼鏡等による矯正で、重度の視覚障害に至ることを防ぐことができるようになりました。しかし、国・地域によって治療の普及度やアクセス、眼科サービスの価格に差があることで、その分布に偏りがあります。例えば、中低所得地域における、未治療の屈折異常の有病率は、高所得地域の4倍と推定されています。白内障による視力障害の割合は、高所得国よりも低・中所得国の方が高くなっています。高所得国では、緑内障や加齢黄斑変性などの疾患がより多くみられます。また視覚障害や失明を経験する人の多くは50歳以上でした。
このように、まだ対処できていない視覚障害への対応を急ぐことが世界的な課題です。さらに、まだ有効な治療、予防、管理方法が確立されていない疾患も依然存在するなか、人口の増加や高齢化から、視覚障害は全体として一層増加することも予想されています。

日本の状況をみてみましょう。下のグラフは、失明を含む重度視覚障害の原因疾患の2014年の調査結果です。原因疾患は緑内障(28.6%)が最も多く、網膜色素変性(14.0%)、糖尿病性網膜症(12.8%)、黄斑変性(8.0%)の順となっており、また、調査対象の18歳以上の視覚障害者の年齢層別では、90歳以上の層を除けば、高齢者になるほど増加し、50歳以上の層が全体の89.0%を占めていました。


疾患ごとの患者数の推計をみてみますと、過去2回の同様な調査と比較してみた場合、割合、患者数ともに緑内障は増加傾向であり、対照的に糖尿病網膜症、黄斑変性は減少傾向でした。これは糖尿病をよりよく管理できる薬剤や、加齢黄斑変性の治療オプションが増えてきたことが関係していると考えられています。原因疾患の第2位である網膜色素変性の推定患者数については、横ばいでした。
ニデックの挑戦
以上のように、医療技術の発達によって、重度の視覚障害を回避できるようになった眼疾患もある一方で、まだ治療のニーズに十分応えられていない眼疾患もあります。また、最新の治療法の世界的に十分な普及に至るまえに、世界人口の増加、高齢化によって視覚障害に至るケースは全体的に増えていくことも予想されています。
このような課題に取り組むため、眼疾患に対し、より効率的な医療技術での対応を普及させることと同時に、さらに有効な治療方法の発見と開発も急務になっています。ニデックは創業以来、ドクターや研究者と協力し、装置開発という側面から眼の健康を守るために尽力してきました。「人工視覚」の開発によって、現在は有効な治療方法がまだ見つかっていない重度の網膜疾患からの視覚障害を軽減できるよう、ニデックは挑戦しています。
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